フランス / France

概要 / Overview

はじめに / Greetings

世界最高峰のワイン大国フランス。気候・風土に育まれ、各地で様々なワインが生産されており、ボルドー、ブルゴーニュ、シャンパーニュ等で銘醸ワインが揃っている。また、厳格なワイン法が制定されており、品質の基準となる格付けを有す。有名なロマネ・コンティ、ペトリュス、シャトー・マルゴー、ドン・ペリニヨン、モンラッシェ等の高級ワインを多く生み出し、繊細で複雑な味わいやブランドイメージは他の追随を許さない。

プロフィール / Profile

ワインと言えば、フランス! / When it comes to Wine, France!

人口 6,700万人、GDP2.6兆ドルのフランスはドイツと並び西ヨーロッパの要である。 総面積55万km²の国土は六 角形をしていることから、フランス本土のことをしばしばヘキサゴンと呼ぶ。北東をベルギー、ルクセンブルク、ドイツ、東をスイス、イタリア、南西はピレネー山脈を隔ててスペインと接する。 北西には英仏海峡を隔ててイギリスがあり、西に大西洋、南東には地中海が広がっている。

ブドウ畑の総面積ではスペインに水をあけられているが、生産量ではスペインやイタリアと世界一の座を争うワイン大国であり、ブルターニュやノルマンディーといった北部や山岳地を除いた各地方にワイン産地が点在する。

とりわけ、ボルドー、ブルゴーニュ、ローヌ、シャンパーニュは銘醸地として世界的に名前が知られ、それぞれの主要品種であるカベルネ・ソーヴィニヨン、ピノ・ノワール、シャルドネ、シラーは新興のワイン産地で広く栽培されている。

また、銘醸地が多いゆえに産地とワインとの結びつきが強く、1935年 A.O.C. (原産地統制呼称) の成立に至った。これは今日、欧州連合の共通ワイン法である A.O.P. や D.O.P. の基礎となっている。

歴史 / History

宗教、政治、経済との関係 / Religion, Politics and Economics

フランスに初めてブドウ栽培がもたらされたのは紀元前6 世紀頃。古代ギリシャの一民族であるフォカイア人が今日のマルセイユに上陸し、植民市マッサリアを築いたときのことである。その後、古代ローマ人の手によってブドウ栽培とワイン造りは広がり、紀元1世紀頃、ローヌにブドウが植えられた。ブドウ栽培はさらにボルドーやブルゴーニュなど、フランス各地へと広がり、4世紀頃までには冷涼なシャンパーニュ地方にも伝わったと考えられている。

ローマ帝国の衰退後、ゲルマン民族の大移動が起こり、フランク諸族を統一したクローヴィスが481年にメロヴィング朝フランク王国を建国。統治を容易にするため、カトリックを認めたことから、ワインは聖体拝領に欠かせぬものとして浸透していった。

中世になるとローマ・カトリック教会の権力が大きくなり、ベネディクト派やシトー派の修道僧によってブドウ畑が拡大。宮廷では王侯貴族の間でボルドーやブルゴーニュの名酒が話題となり、コンティ公ルイ・フランソワのように、後にロマネ・コンティと呼ばれる銘醸畑を手に入れる貴族も現れた。

1789年のフランス大革命によって貴族や教会の財産が没収されると、 ブドウ畑はブルジョワジーの手に渡り、19世紀には市民の間でワインが愛飲されるようになった。また、ワインがフランスの主要な輸出品目の1つとなったのはこの頃である。

ところが19世紀後半になると、フランス中のワイン産地を悪夢が襲う。ベト病やウドン粉病がブドウ畑を蝕み、更にフィロキセラと呼ばれる害虫がブドウ畑を根絶やしにしたのである。

これらの災厄から抜け出した後もフランスは第一次世界大戦や世界恐慌の影響を受け、粗悪なワインの流通や産地偽装などの不正が横行。これらを規制するため、1935年に A.O.C. (原産地統制呼称) が制定された。この A.O.C. は原産地の真正性を守ると同時に、フランス・ワインとテロワールとの密接な関係を裏付けるものとなっている。

20世紀後半は醸造学の発展に伴い各地でワインの品質が向上。 低廉な日常ワインを大量に生産してきた南仏のワインは1980年代以降著しく進化した。また、60年代から80年代にかけて大量に使われた化学肥料や農薬への反省から、90年代に入って自然や環境に優しい栽培法が広がっている。

気候風土 / Climate & Terroir

特徴 / Natural Features

北緯42~51度のフランスは、日本の北海道からサハリンと同じ緯度に位置する。 しかし、暖流である北大西洋海流の影響により、高緯度にありながら厳しい寒さから免れている。

一般的にいえば、大西洋に近いロワール川下流やボルドー地方は海洋性気候、内陸に位置するロワール川上流、ブルゴーニュ、アルザスなどの地方は大陸性または半大陸性気候、地中海に面したラングドック、プロヴァンス、南部 ローヌなどは地中海性気候である。

土壌もボルドーのメドック地区に多く見られる砂利質や右岸の地区で見られる粘土質、ブルゴーニュの粘土石灰質、ローヌ北部の片岩や片麻岩、それに花崗岩など、 産地ごとに様々な特徴があり多様なテロワールを形成している。

ワイン法 / French Wine Law

品質管理 / Quality Management

フランスでは1935年にA.O.C.(アペラシオン・ドリジーヌ・コントローレ)が制定された。 これにより、原産地を名乗るワインは規定に従ってブド ウを栽培・醸造しなければならない。そのルールはブドウの栽培範囲、ブドウ品種、 最大収量、最低アルコール度数、剪定法や醸造法など事細かに決められている。

1949年にはA.O.C.の下位カテゴリーとしてV.D.Q.S.(ヴァン・デリミテ・ド・カリテ・シュペリュール)が制定されたが、 EU共通のワイン法に準じ全てのV.D.Q.S. が A.O.C.に昇格、またはI.G.P.に吸収される形で消滅した。

また、従来あったVin de Pays(ヴァン・ド・ペイ)もEUの方針に従い、I.G.P.(アンディカシオン・ジェオグラフィック・プロテジェ)と名称を変更。それに伴いA.O.C.と同じくI.N.A.O.の管轄下に置かれることとなった。

一方、A.O.C.はEUのワイン法においてA.O.P.(アペラシオン・ドリジーヌ・プロテジェ)に当たるが、 従来のA.O.C.がA.O.P.の条件を充分に満たしているため、フランスではA.O.C.の表記は今なお認められている。

主な産地 / Major Wine Production Region

ボルドー地方 / Bordeaux

【特徴/Features】
赤ワインの銘醸地として名高いワイン生産地であり「五大シャトー」を頂点として厳格な格付けがあります。ボルドーという言葉は「水のほとり」を意味する古語に由来し、その名の通りピレネー山脈から流れるガロンヌ川、ドルドーニュ川が合流して大西洋に注ぐジロンド川の流域で主にブドウが栽培されています。ボルドーワインの最大の特徴は数種類のブドウ原酒をブレンドしていることです。

ブルゴーニュ地方 / Bourgogne

【特徴/Features】
ボルドー地方と並び称される銘醸地。ブレンドではなく単一品種からワインが造られるのが特徴です。有名なワインに、シャブリ、ロマネ・コンティ、ジュヴレ・シャンベルタン、ボージョレ・ヌーヴォ等が挙げられます。格付けは生産者や所有者ごとではなく、畑ごとであるのがボルドーとの違い。赤・白とも優れた品質のワインを生産し、品種は基本的に赤ワインにはピノ・ノワール、白ワインにはシャルドネが使用されています。

コート・デュ・ローヌ地方 / Cotes du Rhone

【特徴/Features】
ローヌ川沿いの南北に長い流域(約200キロ)でブドウが栽培されています。北部はシラーを中心に単一品種で、南部ではグルナッシュを中心に複数品種をブレンドしワインを造っています。両エリアに共通して言えるのは、力強い味わいのワインが多いということ。また、フランス・ワインであれば、ボルドーやブルゴーニュよりもローヌ・ワインが好きという人がいる程にお手頃価格で高品質のワインが多い産地です。

ロワール地方 / Loire

【特徴/Features】
約1,000キロのフランス最長のロワール川流域でワインが造られています。産地は東京~京都間のエリアに広がるのでワインは多岐に渡ります。また、ディズニー映画「美女と野獣」のモデルとなったシャンボール城、シュノンソー城、アンボワーズ城など美しい古城が点在することから「フランスの庭」と呼ばれています。中でもシノン城は英仏百年戦争でジャンヌ・ダルクがフランス王太子シャルル7世に謁見した場所として有名です。

プロヴァンス地方 / Provence

【特徴/Features】
コートダジュールの美しい海岸線、ニースやカンヌなどヨーロッパ屈指のリゾート地、港湾都市マルセイユを有する南フランスのプロヴァンス地方。現在はロゼワインの産地として知られています。地中海性気候の強い日差しと乾燥した気候が湿気を嫌うブドウの栽培に最適。ミストラルと呼ばれる強く冷たい風が昼間の熱気を吹き払い、夜間との寒暖の差が大きくなることもブドウにとって好ましい条件をもたらしています。

ラングドック・ルーシヨン地方 / Languedoc-Roussillon

【特徴/Features】
フランスで最も生産量が多い産地(ラングドック地方の生産が9割、ルーション地方は1割)です。ブルゴーニュやボルドー、シャンパーニュのワインに比べ、お手軽な価格のワインが多く生産されています。プロヴァンス地方と同様に地中海性気候。トラモンタンと呼ばれる乾いた冷風がブドウ畑を乾燥させ病害から守ります。近年はその気候を生かしオーガニックワイン(有機栽培)を行っている生産者が増えています。

アルザス地方 / Alsace

【特徴/Features】
シャンパーニュより更に東にありドイツとの国境近くに位置するアルザス地方。かつてはドイツ領だったことからドイツの影響が色濃く残っており、食文化もドイツ由来のものが多く伝えられています。ワインのボトルも例外ではなく、ドイツワインの細身のボトルがアルザスワインにも使用されています。多様な土壌に恵まれ、複雑な地形とブドウ品種の掛け合わせによって個性的なワインを生み出す銘醸地。アルザス地方で生産されるワインは辛口の白ワインが中心です。

シャンパーニュ地方 / Champagne

【特徴/Features】
パリから近く、主要都市のランスまで車で90分(150キロ)ほどで日帰り旅行が可能な距離です。当地で瓶内二次発酵で造られたスパークリング・ワインのみシャンパンと名乗ることが出来ます。主要品種はシャルドネ、ピノ・ノワール、ムニエの3つ。気温は年間を通して低いので、ゆっくりとブドウが成熟し糖分は上がり過ぎず酸味豊かなワインが造られています。国王の戴冠式など祝宴向けのワインとしてのブランドイメージが確立されています。