概要 / Overview
はじめに / Greetings
1人当たりワイン消費量が世界1位の国。日本の文献で初めて登場するワインはポルトガル・ワインであり、日本との結びつきが強いポルトガル。デザートワインとして有名なポートワインは天然の糖分を残すため、発酵途中にブランデーを添加して造られる。また、緑のワインを意味するヴィーニョ・ヴェルデはアルコール度数が低く、高い酸と微発泡、そして魚介料理との相性が良い。
プロフィール / Profile

ヨーロッパの人気旅行先 / Popular Tourist in Europe
ポルトガルにはユネスコの世界遺産に登録された文化遺産が14件、自然遺産が1件ある。
主要産業はオリーブ、小麦、ワイン、コルク等に代表される農業で、特にコルクは主要な輸出製品の一つで世界生産の約半分を占める。
繊維工業、観光、水産業も盛んで、特に鰯は有名である。ポルトガルの一人当たりの魚介消費量が日本に次ぐ世界6位。また、一人当たりの米の消費量はヨーロッパ最多であり、日本と似た食文化を持つ国であると言える。
イベリア半島西端に位置し、スペインと国境を接するポルトガルの国土は日本の約1/4、人口は約1,000万人で小さな国家であるが、固有の品種やテロワールの違いにより、個性豊かでバラエティーに富んだワインが生産される。また、酒精強化ワインの銘産地として名声を築いてきた産地で、ポートとマデイラはスペインのシェリーと共に世界三大酒精強化ワインと称されている。
歴史 / History

大航海時代 / Age of Exploration
スペインと共にレコンキスタ(カトリック教徒の国土回復運動。 イベリア半島をイスラム教徒から奪い戻す)の過程で建国されたキリスト教国。15世紀末からの大航海時代に他のヨーロッパ諸国に先駆けて海外進出を開始し、アフリカ、アジア、南米大陸に広大な植民地を築く。しかしながら16世紀末からは衰退が始まり、植民地は次々と独立し大国としての地位を失った。この頃、スペインに併合されるが後に独立。
17世紀のイギリスとフランスの戦争でポルトガルワインはイギリスに輸出されるようになり、ポートがイギリスのワインと呼ばれるようになった。その後、イギリスとの通商条約の締結で、ポルトガルワインへの関税を引き下げたことによりイギリス向け輸出が更に拡大した。
1930年代の独裁政権で鎖国に近い状態に至り、ワインは国内消費用となった。しかしながら、この孤立していた間に多くの固有品種が発達している。その後、1986年にEU加盟を果たし、経済成長と企業の民営化を遂げると共に復興政策としてワイン産業が莫大な投資を受け、急速に品質が向上した。近年は世界的なコンペティションにおいて、上位に選出されるワインが多数生み出されている。
気候風土 / Climate & Terroir

特徴 / Natural Features
ポルトガルは小さな国でありながら多彩な気候や土壌を持つ。北西部は比較的涼しい海洋性気候で、南に下るにつれて温暖な地中海性気候の影響が強くなる。南北ともに西の海沿いから東の内陸にかけて乾燥した大陸性の気候に変化する。
マデイラ諸島やアソーレス諸島は温暖で湿潤。年間平均気温は北部の丘陵地帯で約10℃。南部の平地では17.5℃を超え、夏場はしばしば35℃を超える。平坦な沿岸地域は大西洋からの風の影響を強く受け、オポルトの北に連なる山々の辺りでは年間降水量が多いが、内陸のワイン産地では雨が少ない。
土壌は主に北部と内陸では花崗岩、片岩、粘板岩を主体とし、南部と海岸では主に石灰質、粘土、砂である。ところにより沖積土や大理石、火山岩などもあり変化に富んでいる。
主なブドウ品種 / Grape Variety

固有品種が豊富 / Rich in Unique Variety
250種を超える固有品種があり1ha当たりでは世界最多。1930年代の独裁政権時での近隣ワイン生産国との鎖国状態がその背景にある。
ポルトガルの白ブドウで最も多く栽培されているのがフェルナォン・ピレス。この品種は柑橘系の味わいとマスカットを思わせるフローラルなアロマを有す。この品種はマリア・ゴメスの呼称でも知られていて、西海岸を中心に全国的に幅広く栽培されている。
黒ブドウでは、トウリガ・ナショナルが挙げられる。この品種は濃い色調で凝縮した果実味とタンニンを持つ。原産地はポルトガル北部であるが、栽培地は全国に広がっている。
ティンタ・ロリスはスペインのテンプラニーリョと同じ品種でデリケートでエレガントなワインを生み出す。
単一で使用される最も代表的な黒品種がバガである。若いうちは濃密で収敵性の強いスタイルのワインが多いが熟成により真価を発揮し、10年以上かけて複雑なアロマとまろやかな味わいを発展させる。

